「ねぇ、くるみ。あの人、使えないんだけど。騒がしいし」



 冬ちゃんがぶつぶつ言いながら、わたしたちのところへやってくる。



「どうせ手伝ってもらうなら、もっと使える人、いなかったの?」



 冬ちゃん、ズバズバ言うなぁ。

 確かに新名くんは、さっきから冬ちゃんに怒られてばかりだけど。

 苦笑いするわたしの隣で、高折くんが吹き出すように笑った。



「悪い。おれが人選間違えた」

「ですよね? もう少しマシな人、連れてきて欲しかったわ」



 いつの間にか冬ちゃんは、高折くんや新名くんと普通に話している。

 あんなに迷惑がっていたのに。

 でも、勝手に距離をおいていたのはわたしたちのほうで、高折くんも新名くんも、わたしたちと同じ普通の高校生なんだよね。



「ちょっとー、誰か手伝ってくれー」



 立てかけた看板の上のほうを塗っている新名くんが叫んでいる。



「はいっ」



 わたしが駆けつけると、新名くんが言った。



「悪いけど、そこ押さえてて」

「うん」



 わたしは手を伸ばし、新名くんに指された場所を押さえようとする。

 だけどそこまで手が届かない。わたしは必死になって背伸びした。



「はっ? マジで?」



 そんなわたしを見た新名くんが吹き出す。



「マジで届かないの? うわ、矢部さん、かわいー!」



 バカにされてるのかな。これでも真面目にやってるのに。

 クラスで一番背が高い新名くんなら、余裕でしょうけど。