「来たよー! 矢部さん! お助けマン登場!」



 静かな部室のドアが開く。

 騒がしく入ってきたのは、新名くんだ。

 そしてその後ろには、高折くんが立っていた。



「え、なに? 今度はなにごと?」



 冬ちゃんがあわてている。



「ごめんね、冬ちゃん。看板明日までに終わりそうにないから、お手伝い頼んだの」

「そういうことです! なんなりとおれたちにお申し付けください!」

「はぁ?」



 胸を張る新名くんの前で、冬ちゃんが唖然としている。

 わたしはちらりと高折くんのことを見た。

 高折くんは新名くんの頭を叩いて「調子に乗るな」なんて言っている。



 実は……来てくれないかもって思っていた。

 今朝、学校へ行く前に、わたしは高折くんにお願いをしたんだ。

 冬ちゃんとふたりで頑張ってきたけど、明日の文化祭までには無理そうだって。

 だからできれば手伝って欲しいって。



 高折くんは「わかった」とひと言つぶやいただけで、さっさと家を出ていってしまったから、少し不安だった。

 やっぱりわたしみたいな子が、高折くんにお手伝いを頼むなんて、ずうずうしかったかなって。

 だけど高折くんはこうやって、新名くんまで連れて手伝いにきてくれた。



「あの……ありがとう」



 わたしが言うと、高折くんはちらっとわたしを見て、「べつに、暇だったから」とつぶやいた。