「結局なんだったんだろうねー。さっきの」



 紙に下絵を描きながら、冬ちゃんが言った。



 放課後、静かな部室で、わたしと冬ちゃんは看板作りをはじめていた。

 騒がしい教室にいるより、やっぱりここで作業をしたほうが落ち着く。

 今日は他に部員もいなくて、グラウンドで部活をしている運動部の掛け声だけが、遠く聞こえた。



「単なる気まぐれだったのかなぁ。あれから高折くん、まったく声かけてこないし」



 それはわたしが、高折くんを怒らせてしまったから。



「あの人たちの考えてることは、やっぱりわかんないわ」



 冬ちゃんが「できた!」と言って、わたしに絵を見せる。

 冬ちゃんはやっぱり絵が上手だ。

 わたしもこんなふうに自信を持って、人に見せられたらいいんだけど。

 わたしは冬ちゃんの前で、黙ったまま微笑んだ。