きみとぼくの終わらない物語

 お昼になると、冬ちゃんがわたしの席にやってきた。

 前の席の男の子は、昼休みになるとどこかへ行ってしまったので、冬ちゃんはその椅子を借りて、わたしの机にお弁当を広げた。



「また近くになれなかったね、席」



 冬ちゃんがお箸を取り出しながら、がっかりしたようなため息をつく。

 わたしはさっき永峰さんに「かわって」と言われたことを思い出し、ちょっと胸が痛くなる。



「……ごめんね?」

「へ? なんでくるみが謝るの?」



 冬ちゃんの前で苦笑いをする。



「あ、今日もミートボール入ってる!」



 わたしのお弁当を見て、冬ちゃんが言った。

 今日は水曜日、わたしがお弁当を作る日だ。



「一個食べる? いいよ」

「やった! これおいしいんだよねー」



 冬ちゃんがにこにこしながら、わたしの差し出したお弁当箱からミートボールを取った。



「うん。やっぱ、おいしー」



 そんなに喜んでもらえると、こっちもうれしくなる。



「ん?」



 冬ちゃんが何かに気づいたように、じっとある場所を見つめている。



「どうしたの?」



 冬ちゃんの視線の先を追いかける。

 わたしの隣の席には高折くんが座っていた。

 新名くんとしゃべりながら、お弁当を食べている。

 冬ちゃんはわたしに顔を寄せて、小声でささやいてくる。



「なんかさ、あの人の食べてるミートボール、これと似てない?」

「えっ」



 冬ちゃんがわたしのお弁当を指さす。



「お弁当もくるみと似てる。おかずとか、いろどりとか」



 心臓がどきっとする。

 高折くんが食べているのは、わたしが作ったお弁当。

 でも高折くんの分は、わたしより量を多くして、女の子っぽくならないように気をつけているつもりだった。

 だけど中身のおかずはわたしと全く同じなんだから、似ていて当たり前なんだ。



「そ、そうかな?」

「そうだよ。ほら、くるみも見てみな」

「やめなよ。人のお弁当じろじろ見るのとか」



 するとこちらを向いた高折くんと目が合って、わたしはあわてて顔をそむけた。

 冬ちゃんは首をかしげながら、そんなわたしたちを観察している。



 やっぱり新しい席は、とってもやりにくい。