「お前、この席、超寝れるじゃん! サイコーかよ! おれとかわって!」

「やだね」

「蓮ちゃんの好きなプリンおごってやるから。ソーセージパンもつけるから。お願い!」

「お前の席どこ?」

「一番前のど真ん中! サイコーの席だろ! ぜひお前に譲ってやりたい!」

「ふざけんな。誰がかわるか」

「蓮ー、助けてくれよぉ。おれとお前の仲じゃんか」



 新名くんと高折くんが騒いでいる。

 わたしは右側の耳で、その声を聞く。

 いや、騒いでいるのはほとんど新名くんか。

 高折くんはそんな新名くんに、つきあってあげている感じ。

 でもなんだか楽しそうだ。



 雷が鳴った日の翌朝、わたしが起きると高折くんはもう家にいなかった。

 帰ってくるのも遅くて、同じ家に住んでいても、ほとんど顔を合わせない。

 だからあの夜のこと、気になっていたのに、なにも聞けないでいた。