こんなことってあるんだろうか……。



 今日のホームルームは席替えだった。

 クラス委員さんが作ってくれたくじを引き、書かれた番号を黒板で確認する。



「えっ……」



 わたしの番号は、窓側の一番後ろ。

 あの目立つグループの人たちが、好んで集まりそうな席。

 いやだな。もっと目立たない場所がよかったんだけど。

 もう一度黒板を見ると「個人的な席の交換、禁止!」と大きな字で書かれている。

 そうしないと勝手に席を交換してしまう人が、後を絶たないからだ。



 わたしはため息をつきながら、冬ちゃんの姿を探す。

 冬ちゃんは廊下側から二列目の、前から二番目の席に座り、わたしに苦笑いで手を振っている。

 離れちゃったな。またショック。

 だけどわたしにはもっとショックなことが待っていた。



 笑い声と落胆の声が入り混じった教室の中、自分の荷物をまとめて一番後ろの席へ行く。

 そこでわたしは「あっ」と小さく声を上げた。

 わたしの座ることになった席の隣に、高折くんが座っていたのだ。

 うそでしょ……となり?



 雑誌をぱらぱらとめくっていた高折くんが、ちらっとわたしを見る。

 そして荷物を抱えたまま突っ立っていたわたしに、意味ありげな笑顔を見せた。



「おれ、ここ」

「……うん」

「よろしく」

「よろしく……」



 小さく頭を下げておずおずと窓際の席に座ったら、駆け寄ってきた新名くんが高折くんの背中に飛びついた。