その夜はインスタントのラーメンを作って、ひとりで食べた。

 お風呂に入って二階へ上がり、ベッドの中にもぐり込む。

 高折くんは隣の部屋に入ったまま、出てこなかった。



 ふたりきりの夜。

 さっきみたいにまたおしゃべりできるかな、なんて、期待した自分が恥ずかしい。

 お母さんとお父さんがいなくたって、今夜もいつもと同じ夜なんだ。



 気づいたら眠っていて、時計を見たら真夜中だった。

 なんとなく寝苦しくて、何度か寝返りを打った後、わたしはベッドから降りた。

 なにか飲もう。

 ドアを開け、静まり返った階段を降りる。

 キッチンへ行こうとしたら、リビングにぼんやりと灯りが揺れているのに気がついた。



「え……」



 おそるおそる、部屋の電気がついていないリビングをのぞいてみる。

 かすかに聞こえる音は、テレビの深夜番組。

 部屋の中を照らすのは、テレビの画面の灯りだけ。



「高折くん……」



 そんな薄暗い部屋の中、高折くんは膝にミルを乗せてソファーに座っていた。

 眠っているような、眠っていないような、ぼうっとした顔つきで。

 テレビの画面には、外国の映画が映っていた。

 だけど高折くんの目は、それを見ていない。

 ただ画面に映る光を、生気のない目で見つめているだけだ。



 わたしは回れ右をし、また階段をのぼった。飲み物は、取りに行けなかった。

 声をかければよかったのに。

 雷を怖がっていたわたしに「どうした?」って言ってくれた高折くんみたいに、わたしも声をかけてあげればよかったのに。

 どうしてだろう。わたしにはそれができなかった。



 わたしは頭から布団をかぶって、目をぎゅっと閉じた。

 だけどいま見た高折くんの表情が、頭の端っこにこびりついて、どうしても眠れなかった。