しばらくふたりでソファーに座ってぼんやりとテレビを観ていたら、いつの間にか雷の音も遠ざかっていた。

 屋根を叩く雨の音も、少し小さくなったみたいだ。



 番組が終わって夜のニュースが始まった。

 高折くんは両手を伸ばし、伸びをする。

 ミルが膝の上から飛び降りて、窓のそばに寝ころんだ。



「あのさぁ、これ」

「え?」

「さっきから気になってたんだけど」



 わたしは高折くんの視線の先を見る。

 目の前のテーブルの上には、スケッチブックが開かれたままだった。

 まずい。雷のことで頭がいっぱいで、絵を片づけるの忘れてた。



「ああっ、見ないで!」

「は? いまさら?」



 高折くんがふっと笑って、スケッチブックに手を伸ばす。

 もうだめだ。確かにいまさらだよね。



「これ、この前の夜、描いてたやつだろ?」



 わたしはブランケットを頭からずらしながら、小さくうなずく。



「さすが美術部。上手いな」



 高折くんはわたしが色をつけた、男の子の絵を見ていた。

 わたしは恥ずかしくなって、うつむく。

 よりによって、最初にこの人に見られてしまうなんて。

 でもわたし、美術部だって高折くんに言ったかな?

 もしかしてお母さんから、聞いたのかな?



「将来は画家にでもなるの?」

「ま、まさか。わたしなんか全然下手だから。冬ちゃんのほうがずっと上手」



 だから恥ずかしくて言えない。

 絵本を作ってみたいなんて。



「そんなことないと思うけど」



 高折くんがスケッチブックをぱらぱらとめくる。

 わたしは耐え切れなくなって、高折くんの手からスケッチブックを取り上げた。