雨の音と雷の音は、まだ頭の上から聞こえてくる。

 ミルを膝に乗せた高折くんは、リモコンを手にとると、テレビをつけてボリュームを上げた。



「子どもの頃、おれはこうやってた。ひとりのとき」

「え……」



 高折くんも雷、怖かったの?



「子どものときだぞ? 今はしない」



 ブランケットの陰から、そっと右隣を見る。

 高折くんはミルの背中を左手でなでながら、じっとテレビの画面を見つめている。

 テレビの中ではお笑い芸人が、いま流行のネタをやっていた。

 観客の笑い声が、雨の音を賑やかにかき消していく。



 わたしは大きく息を吸ってから、ふうっとはいた。

 雷の音はまだ聞こえていたけれど、わたしの右側に高折くんがいるだけで、なんだかすごく安心できた。