ザーザーと雨音がひどくなる。外はあっという間に真っ暗だ。

 わたしはリビングのソファーの上で、体をこわばらせていた。



「あっ」



 空に閃光が走る。



「光った!」



 わたしは両手で耳を塞ぐ。

 少し間を開けて、お腹に響くような雷鳴が聞こえてくる。

 わたしはさらに強く耳を押さえて、体を丸めた。

 どうしよう。怖い。

 雷って小さい頃から大っ嫌いなんだ。

 こんなときにひとりきりなんて……。



 そばにいたミルをつかまえて、無理やり胸に抱え込んだ。

 ミルは迷惑そうな顔をしていたけど、ふかふかしたぬくもりにちょっぴりだけ癒される。

 また空が光った。



「ひゃあっ……」



 思わず情けない声がもれる。

 目をつぶってミルを抱きしめていたら、玄関で物音がした。

 もしかしてお母さん、帰ってきてくれた?

 ミルを抱いたまま立ち上がり、玄関に駆けていくと、途中で家が揺れるほどの大きな音が響いた。



「きゃあっ」



 廊下で頭を抱えて、うずくまる。

 手から離れたミルが、床をとてとてと歩いていく。



「どうした?」



 すぐ近くで低い声がした。

 おそるおそる顔を上げると、わたしを見下ろしている高折くんの姿が見えた。

 高折くんは、髪も服もびしょ濡れだった。

 自転車で出かけていたからだろう。

 その足元にミルが目を細めてすり寄っている。



「高折く……」



 玄関の外が明るく光るのと同時に、バリバリっと何かを切り裂くような音がした。



「いやぁぁ!」



 落ちた。絶対近くに落ちた。次はきっとここに落ちる。

 うずくまって震えているわたしの前に、高折くんがしゃがみこむ。

 もう一度顔を上げると、高折くんはミルの頭をなでながら、ふっと笑った。