「そう、アルバイトしてたの」
「はい。明日から帰り遅くなりますけど、先に休んでてもらってかまいませんから」
「自転車で行くんでしょ? この辺、夜は真っ暗になるから、気をつけてね」
「わかりました」
お母さんとお父さんの前で夕食を食べている高折くんは、今日も礼儀正しい好青年だ。
わたしはお母さんの作ってくれたエビフライを、黙ったままサクッとかじる。
「あ、それから、バイトの日は夕飯いらないです。店長が何でも好きなもの食べさせてくれるんで」
「あら、そうなの? 飲食店のアルバイトっていいわねぇ。じゃあバイトのない日は言ってね。ご飯作るから」
「はい」
高折くんの肘とわたしの肘が、またぶつかりそうになる。
高折くんはお茶碗のご飯を、最後の一粒まで残さず綺麗に食べ終えると、「ごちそうさまでした」と食器を持って立ち上がった。
「蓮くん。今日お風呂まだでしょ? 先に入っていいわよ」
「ありがとうございます。では遠慮なく」
高折くんがミルを連れて部屋を出ていく。
お母さんは心配そうな顔つきでお父さんに言う。
「自転車でそんな遅くまで……大丈夫かしら」
「大丈夫だよ。男の子なんてそんなもんだろう? あんまり束縛しすぎるのもよくないぞ?」
「そうだけどねぇ……」
わたしはふたりの声を聞きながら、「ごちそうさま」と言って立ち上がる。
二階へ行こうと洗面所の前を通った。
すると閉まったドアの前でミルが座っていて、ご主人様を待ちながら、恋しそうに、にゃあにゃあと鳴いていた。
「はい。明日から帰り遅くなりますけど、先に休んでてもらってかまいませんから」
「自転車で行くんでしょ? この辺、夜は真っ暗になるから、気をつけてね」
「わかりました」
お母さんとお父さんの前で夕食を食べている高折くんは、今日も礼儀正しい好青年だ。
わたしはお母さんの作ってくれたエビフライを、黙ったままサクッとかじる。
「あ、それから、バイトの日は夕飯いらないです。店長が何でも好きなもの食べさせてくれるんで」
「あら、そうなの? 飲食店のアルバイトっていいわねぇ。じゃあバイトのない日は言ってね。ご飯作るから」
「はい」
高折くんの肘とわたしの肘が、またぶつかりそうになる。
高折くんはお茶碗のご飯を、最後の一粒まで残さず綺麗に食べ終えると、「ごちそうさまでした」と食器を持って立ち上がった。
「蓮くん。今日お風呂まだでしょ? 先に入っていいわよ」
「ありがとうございます。では遠慮なく」
高折くんがミルを連れて部屋を出ていく。
お母さんは心配そうな顔つきでお父さんに言う。
「自転車でそんな遅くまで……大丈夫かしら」
「大丈夫だよ。男の子なんてそんなもんだろう? あんまり束縛しすぎるのもよくないぞ?」
「そうだけどねぇ……」
わたしはふたりの声を聞きながら、「ごちそうさま」と言って立ち上がる。
二階へ行こうと洗面所の前を通った。
すると閉まったドアの前でミルが座っていて、ご主人様を待ちながら、恋しそうに、にゃあにゃあと鳴いていた。


