きみとぼくの終わらない物語

「……寝てるの?」



 そうっとそばに近寄ってみると、かすかな寝息が聞こえてきた。

 あの高折蓮が、うちのソファーで寝てる。

 きっと誰に話しても、信じてもらえないだろうけど。

 いつも高折くんにべったりくっついている永峰さんに知られたら……うわ、怖い。

 また絶対にらまれる。



 起こさないようにそっと、その顔をのぞきこんだ。

 この前わたしの寝起きを見られたから、このくらいいいよね?

 すうすうと穏やかな寝息を立てている高折くんは、なんだか幸せそうな顔をしていた。

 いい夢を見てるといいな、なんて思う。



「んにゃあ~ご」



 突然低い鳴き声が聞こえて、わたしは思わず身構えた。

 見ると高折くんのお腹の上から、ミルがわたしをにらむように見ている。



「んー……ミル……重い……」



 はっと顔を向けると、高折くんが目をこすりながらソファーから体を起こした。



「あれ……おれ、寝てた?」



 高折くんは眠そうな顔でわたしに聞いた。

 わたしはただこくこくとうなずく。

 そんなわたしを見ながら、高折くんがつぶやいた。



「マジか……人んちで、ごめん」

「い、いえ。どうぞ。ご自由に」



 高折くんから目をそらし、キッチンのほうを見る。

 お母さんはまだ帰っていない。

 それに気づいたら、なんだか急に居心地が悪くなった。