きみとぼくの終わらない物語

 昼休みは、冬ちゃんと机をくっつけてお弁当を食べる。

 一年の時に知り合ってから、ずっとこうやって食べている。

 今年も同じクラスになれて、本当によかった。



「そのミートボールひとつちょうだい?」

「いいよ」



 冬ちゃんのお箸がわたしのミートボールをつまむ。

 そしてそれを口に入れると、冬ちゃんはほっこりした顔つきで目を細める。



「あー、やっぱりくるみの作ったミートボールはおいしい! 偉いよねぇ、自分でお弁当作ってるなんて」



 わたしは冬ちゃんの前で苦笑いをする。



「一週間に一度だけだもん。それにそのミートボール簡単なんだよ。電子レンジで作れるの」

「へぇー。今度うちの母親に教えてあげよ」



 冬ちゃんと笑い合う。

 今日は水曜日。週に一度だけ、わたしがお弁当を作る日だ。

 水曜日はお母さんの出勤時間が早くて忙しいから、中学生の頃からそうしている。

 いまではおかずのレパートリーもずいぶん増えた。



 わたしはちらりと、教室の後ろに固まっている男子を見る。

 高折くんが新名くんとしゃべりながら、お弁当を食べていた。

 急に胸がどきどきする。

 だって高折くんが食べているのは、わたしの作ったお弁当だ。

 おいしいって思ってくれていたら、いいんだけど。



 少しすると後ろのグループがガタガタと立ち上がった。

 みんなで売店に買い物に行くみたいだ。



「蓮! お前は来るな。金持ってねーだろ」



 新名くんのふざけた声が聞こえてくる。

 新名くんの声は大きいから、聞きたくなくても聞こえてしまう。



「ひでーな。誰か金貸して。おれもプリン食いたい」

「やだね。お前すぐパクるじゃん」

「おれ、蓮に貸した金、まだ返してもらってねーぞ」



 大きな声で騒ぎながら、教室を出ていく男子たち。

 冬ちゃんはそれを見ないまま、またため息をつく。



「静かに出ていけないのかな、あの人たちは。小学生じゃないんだから」



 冬ちゃんは本当に、あのグループを迷惑がっている。

 わたしだって、あまりいい印象は持っていなかったけど。