「すごい! おいしそう! これお弁当ブログとかにのってるやつみたい!」



 高折くんはきれいな色の卵焼きをお弁当箱に詰めて、「まあまあだな」とうなずく。

 なんだかちょっとショックだな。

 高折くんって勉強もスポーツも完璧な上に、お料理までできちゃうなんて。



「はい。これ、お前の」

「ありがと……」



 高折くんからお弁当箱を受け取りながら、ちょっと落ち込む。



「なんだよ。おれの弁当、気に入らないの?」

「ちがっ、違うよ! わたしの作ったのよりおいしそうだから、びっくりしちゃって……これから水曜日も、高折くんに作ってもらったほうがいいのかな、なんて……」

「いや、それは無理」



 きょとんとするわたしの前で、高折くんは自分のお弁当の蓋をしめて青いバンダナで包む。



「水曜日は絶対作らない。くるみの作ってくれた弁当、食べたいから」

「え……」

「またミートボール入れて。あれ、うまいから好き」



 ふっと笑った高折くんが、包んだお弁当箱でわたしの頭をこつんと叩く。



「早く飯、食っちゃえよ。遅刻するぞ?」

「あっ、うん」



 わたしはぼうっとしたまま椅子に腰かける。

 お弁当を持ってキッチンを出て行く高折くんのあとを、ミルがのろのろと追いかけていく。



『あれ、うまいから好き』



 高折くんの言葉を思い出したら、頬がすごく熱くなって、お母さんの作ってくれた朝食がちっとも喉を通らなかった。