ふかふか、ふわふわ……やわらかいものが触れてくる。

 なんだか雲の上でお昼寝しているみたい。

 あったかくて、きもちいい。

 このままずっと、こうやっていられたらいいのになぁ……。



「んなぁ~ご」

「ミル!」



 飛び起きたわたしの布団の上で、ミルが大きなあくびをした。



「ミルー。またここにいたのか」



 制服を着た高折くんが入ってくる。

 わたしはあわてて毛布を引っ張る。



「お、おはよう」

「おはよ」



 高折くんは今朝も平然とした顔つきで、ミルをひょいっと肩に乗せた。



「窓の外、見てみなよ」

「え? 窓の外?」



 高折くんがミルを肩に乗せたまま、わたしの部屋のカーテンと窓を開いた。

 わたしはベッドから降り、首をかしげながら高折くんの隣に並ぶ。



「あっ……」



 思わず声を上げてしまった。

 空は青く晴れているのに、白い花びらみたいな雪が、風に乗ってはらはらと舞っているのだ。



「きれい……」

「だろ? さっきミルが教えてくれた」

「え、ミルが?」



 隣を見ると、高折くんの肩の上から、ミルがわたしを見下ろして「なぁ~」と鳴いた。

 まるで自分がこの雪を降らせているとでも言うように。

 わたしはふふっと笑って、また前を向く。



 白い息を吐きながら、しばらくふたりで窓の外をながめていた。

 ミルは気持ちよさそうにゴロゴロと喉を鳴らしはじめる。



 そういえば夏休みが終わったばかりの頃、キラキラ輝く雨の中を、走って帰ったことがあったっけ。

 高折くんは自転車で、わたしをすうっと追い越していって……。

 でもあの頃から高折くんはわたしのこと……。



「くしゅん」



 いきなりくしゃみが出て、体がぶるっと震えた。



「あっ、ごめん。あんたパジャマだったな」



 高折くんがあわてて窓を閉めて、わたしを見る。

 一瞬目が合って、恥ずかしくなる。



「朝メシできてるって」

「うん。いま行く」



 高折くんがミルを肩に乗せたまま、部屋を出て行った。

 わたしはその背中を見送って、ふうっとため息をつく。

 高折くんと暮らしはじめて四か月。

 わたしは前よりもっと、どきどきしている。