親友のお葬式に行ったあと、お母さんは一晩中泣き崩れて、朝起きてきたらわたしとお父さんにこう言った。



「決めた。わたしが蓮くんを預かる」

「え?」



 聞けば、両親を亡くした高折くんを、積極的に引き取ってくれようとする親戚はいなかったそうだ。

 その話題になると、大人たちは口々に言い訳をはじめて、身寄りのない親戚の子を押し付け合っているのがみえみえだったという。

 住んでいた家はアパートで、近いうちに引っ越さなければならないというのに。



 頼るべき身寄りもなく、住む場所も失おうとしている高校生をひとりにしてはおけないと、お母さんは高折くんをうちで引き取りたいと言い出した。



「そ、そんなこと、できるの?」

「できる。お父さんとくるみが了承してくれるなら。だって親戚の人たち、みんな自分のことしか考えてないのよ? ひとりぼっちになった蓮くんの心配なんか、誰もしてない」



 泣いて真っ赤に腫れ上がった目で、でも力強くお母さんが言う。



「お父さんはいいと思うぞ。せめて高校卒業するまでは、うちで面倒みてやればいい」

「くるみは?」



 お母さんに聞かれて言葉がつまる。

 事情はよくわかったし、お母さんの強い気持ちもわかる。彼に同情もする。

 だけど同い年の男の子と、この家で一緒に暮らすなんて……。



「くるみが無理だったら、やめるよ?」



 わたしはお母さんの顔を見る。お母さんはやわらかく微笑む。



「くるみの気持ちを無視して、この話は進められないから。くるみが無理だったら、他の方法を考えてみる」

「わたしも……いいよ」



 小さな声で答えた。



「高折くんがうちに来ても……いいよ」



 お母さんは泣きそうな顔をして、それからまた笑って、わたしの体をぎゅうっと抱きしめた。

 こんなふうに抱きしめられたのは、小学生の頃以来の気がした。



 それからもいろいろあって大変だった。

 一番の問題は、高折くん本人がそれを拒んだこと。

 いくら母親の親友だからって、他人の家でお世話になるなんて申し訳ないと。

 でもそんな高折くんを、お母さんはかなり無理やり連れてきたのだ。