きみとぼくの終わらない物語

 高折くんと並んでベンチに座る。

 いつものように、お互い少し間をあけて。

 ミルは高折くんの膝の上で目を閉じる。

 空気はひんやりと冷えていて、吐く息は白い。

 なんの話かと、少しどきどきしていたら、突然高折くんはこう言った。



「おれの初恋って……幼稚園のときだったんだ」

「え?」



 高折くんはわたしを見て、照れくさそうに笑う。

 なんの話かと思ったら、初恋の話?

 びっくりしたけど、でもそれ、すごく聞いてみたい。



「お母さんと一緒に女の子の家に遊びに行って、その子が恐竜の絵本を貸してくれた。あんまりしゃべらなかったけど、その子のそばにいるだけで居心地がよくて……ずっとここにいたいと思った」



 うそ……それ……わたしじゃない?

 高折くんは少しいたずらっぽく、口元をゆるめる。



「帰りにお母さんにねだって、恐竜のキーホルダーを買ってもらった」



 ポケットの中から家の鍵がついたキーホルダーを取り出して、高折くんがちゃりんと揺らす。



「あ……」



 そのとき買ってもらったものを、今でも大切に使っているの?



「その子とは小学校も中学校も別々で、幼稚園以来会うことはなかったけど……でもキーホルダーを見るたびに思い出してた。あの子、どうしているのかなぁって。たぶんそれが……おれの初恋だったんだと思う」



 顔が急に、ほてってくる。



「中学の頃、はじめて女の子に告白されてつき合ったんだ。でもなんか違うなぁって思って、すぐに別れた。それからもそれの繰り返し。永峰がおれのこと想ってくれてるってのも、わかってたけど……それもちょっと違うって気がしてた」



 わたしはそっと顔を上げて高折くんを見る。



「高校に入学したとき、母さんから『あの子も同じ学校にいる』って聞いて、こっそり教室のぞきに行った。興味あったんだ。どんなふうになってるかって」



 それって、すごく恥ずかしい。

 初恋の淡い思い出が、幻滅してしまったかもしれない。

 声も出せないわたしの前で、高折くんは続ける。



「そのときは正直、『あの子かぁ』って思ったくらいだったんだけど……でも二学期の文化祭前、偶然見かけたんだ。美術室で、その子が看板作ってるとこ」

「あ……」



 覚えてる。去年も看板作りをした。