きみとぼくの終わらない物語

「泣いてもいいよ……」



 頼りない手で、その背中をなでる。



「誰も見てないから……わたししかいないから……だから」

「……だから、やなんだよ」



 ぼそっとつぶやく高折くんの声。



「くるみの前でなんか……絶対泣きたくなかった」



 背中をなでる手を止める。

 高折くんはわたしを見ないようにして、鼻をすすっている。

 わたしはもう一度手を伸ばし、そんな高折くんの体を抱きしめた。

 高折くんが、どこかへ行ってしまわないように。

 しっかりと、抱きしめた。



「わたしは……」



 かすかに震えている高折くんの体は、すごくあったかい。



「強くない高折くんも、情けない高折くんも……好きだから」



 だからわたしの前では、本当の高折くんを見せて欲しい。

 カッコつけなくていい。

 無理しなくていい。

 泣いてもいい。

 わたしは本当の高折くんを知りたいから。



 乾いた風が吹く。遠くで鳥がひゅうっと鳴く。

 わたしの手の中でうなだれていた高折くんが、そろそろと手を伸ばした。

 そして覚悟を決めたように、わたしの背中を抱き寄せる。

 ぎゅっと高折くんの中に包み込まれた。

 抱きしめていたはずなのに、いつの間にか抱きしめられている。



「……ごめん。少し……こうさせて」



 消えそうな声で高折くんが言う。

 わたしは高折くんの胸の中で、静かにうなずく。

 悲しくて、苦しくて、でもどうにもならなくて……わたしは頼りない手で、ただその背中をなで続ける。

 わたしにできることは――そのくらいしか、ないから。



 わたしたちは高折くんのお父さんとお母さんが見ている前で、お互いの体温を求めて、抱きしめ合った。