高折くんと電車に乗った。行き先は教えてくれなかった。

 気になったけど、高折くんがいつもより真剣な表情をしていたから、なんとなく聞くことができなかったんだ。



「ここで……降りて」

「うん」



 言われるままに、知らない駅で降りる。

 大きくもなく小さくもなく、でも綺麗な駅だ。

 駅前のロータリーには噴水があって、花壇に色とりどりの花が咲いていた。



「ここから少し歩くんだけど」

「いいよ」



 わたしはマフラーを巻き直し、高折くんについて歩いた。

 駅から坂道をのぼって十五分くらい。

 少し疲れてきた頃、急に視界が開けた。



 小高い丘の上。知らない町の景色が小さく見える。

 そしてその先にあったのは、緑の芝生の中にある、広々とした霊園だった。



「ここに、お父さんとお母さんのお墓があるんだ」

「あ……」



 そうだったんだ。知らなかった。



「高折くんは……いつもここにひとりで来てたの?」

「うん。まぁ、ときどき」



 もしかしてバイトに行っていると嘘をついていた頃も、ひとりでここに来ていたのかもしれない。



「……会ってくれる? うちの親に」

「うん」



 わたしがうなずくと、高折くんは小さく微笑んだ。