「切れた」



 わたしは高折くんの顔を見上げる。



「なに考えてるんだよ、あいつら」



 ぶつぶつ言いながら、スマホをポケットに突っ込んだ高折くんが、わたしを見た。



「ど、どうする?」



 高折くんが小さくため息をつく。



「しょうがないから……どっか、行こうか」

「そうだね……」

「どこか行きたい所ある?」



 そんなこと急に聞かれても……想像もしていなかった出来事に、頭がついていかない。



「特に……ないけど」



 ああ、こう言うとき、行きたい場所がすっと出てくればいいんだろうけど。

 高折くんが考え込む。

 そうだよね。高折くんだって、急にわたしとふたりきりにさせられて……きっと困ってるよね。

 そんなわたしの前で、高折くんがぽつりと言った。



「もしよかったら……一緒に行って欲しい場所があるんだ」



 わたしは顔を上げて高折くんを見る。



「いいよ? わたしはどこでも」



 高折くんがほっとしたように、頬をゆるませる。



「じゃあ、つきあって?」



 わたしは高折くんの前で、しっかりうなずいた。