お母さんが高折くんをこの家に連れてきたのは、夏休みの終わり。
ものすごく暑かった日の、どしゃぶりの雨が降り出した午後だった。
「ほら、蓮くん来たわよ。あなたたち、同じクラスなんですってね。すっごい偶然ね」
高折くんは高校の制服を着てリュックを背負い、片手に濡れた傘を持ち、もう片方の手で猫を抱き、うちの玄関に立っていた。
高折くんの黒い傘から雨水がじんわりと滴り落ちて、足元に小さな水たまりができた。
「幼稚園の頃、うちに蓮くんが来てふたりで遊んだのよ。くるみ、覚えてる?」
「……うん」
ちらりと目の前に立つ高折くんを見た。
高折くんは猫を抱きしめ、なんだかぼんやりと立っていた。
その姿は学校で見る高折くんとはまったく違い、迷子になって途方に暮れている、小さな子どもみたいに見えた。
だけど無理もない。
高折くんは数日前に、たったひとりの家族だったお母さんを亡くしたばかりなんだから。
高折くんのお母さんとわたしのお母さんは、昔からの大親友だった。
高折くんが小学生の頃、病気でお父さんを亡くしてからは、お母さんがひとりで必死に高折くんを育ててきたそうだ。
わたしのお母さんはそんな親友を、影でずっと支えてきた。
それなのに……。
高折くんのお母さんは仕事帰り、交通事故に遭い亡くなってしまった。
本当に突然の出来事だった。
ものすごく暑かった日の、どしゃぶりの雨が降り出した午後だった。
「ほら、蓮くん来たわよ。あなたたち、同じクラスなんですってね。すっごい偶然ね」
高折くんは高校の制服を着てリュックを背負い、片手に濡れた傘を持ち、もう片方の手で猫を抱き、うちの玄関に立っていた。
高折くんの黒い傘から雨水がじんわりと滴り落ちて、足元に小さな水たまりができた。
「幼稚園の頃、うちに蓮くんが来てふたりで遊んだのよ。くるみ、覚えてる?」
「……うん」
ちらりと目の前に立つ高折くんを見た。
高折くんは猫を抱きしめ、なんだかぼんやりと立っていた。
その姿は学校で見る高折くんとはまったく違い、迷子になって途方に暮れている、小さな子どもみたいに見えた。
だけど無理もない。
高折くんは数日前に、たったひとりの家族だったお母さんを亡くしたばかりなんだから。
高折くんのお母さんとわたしのお母さんは、昔からの大親友だった。
高折くんが小学生の頃、病気でお父さんを亡くしてからは、お母さんがひとりで必死に高折くんを育ててきたそうだ。
わたしのお母さんはそんな親友を、影でずっと支えてきた。
それなのに……。
高折くんのお母さんは仕事帰り、交通事故に遭い亡くなってしまった。
本当に突然の出来事だった。


