「なんなのよ、もう」



 永峰さんもぶつぶつ言いながら、去っていく。



「どうする? くるみ」



 冬ちゃんがつぶやいた。



「うん……でも新名くん、なんか楽しそうだったね」

「イベント好きそう」

「幹事とか好きそう」

「仕切るの好きそう」



 わたしたちがくすくすと笑い合っていると、隣から高折くんの声が聞こえた。



「あいつは昔から、ああなんだよ。仲間に元気のないやつがいると、特に張り切る」



 高折くんがふっと笑って立ち上がる。



「しょうがねぇ、おれも行ってやるかな。だから来いよ。冬ちゃんとくるみも」



 それだけ言うと、高折くんはどこかに行ってしまった。

 冬ちゃんはにやにやと笑っている。



「『来いよ、くるみも』だってさ」

「冬ちゃんだって誘われたでしょ?」

「いやいや、わたしはおまけですから」



 冬ちゃんは笑いながらそう言って、それから少しだけ声をひそめる。



「でも元気ないやつって、実は高折くんじゃないの?」



 わたしは冬ちゃんの顔を見る。



「最近高折くん、新名くんたちとあんまりつるまなくなったよね? ひとりでいること多いし」

「……そうかな」

「そうだよ」



 冬ちゃんがわたしを見て、にっと笑う。



「くるみが高折くんに、告白した頃からなんだよね」



 わたしは黙って、冬ちゃんの声を聞いていた。

 やがて賑やかな教室の中に、聞き慣れたチャイムの音が響いた。