「ねぇ、くるみ?」



 冬ちゃんがわたしの顔をのぞきこむ。



「高折くんとは……最近どうなの?」

「……どうって?」



 顔を上げたわたしに、冬ちゃんが笑いかける。



「今、目が合ったでしょ?」



 冬ちゃんに見られてた?

 恥ずかしくなって、途端に顔が熱くなる。



「知ってるよ、わたし。高折くんがいつもちらちら、くるみを見てること」

「そんなこと……」

「あるでしょ?」



 冬ちゃんがわたしを見て、にかっと笑う。



「高折くん、くるみと恋に落ちるなんてありえないって言ってたけど、あれ嘘でしょ。わたしは絶対、両思いだと思うんだけどなぁ、あんたたち。高折くんもいい加減、素直になればいいのに……ていうか、くるみ。もう一回高折くんに告ってみれば?」

「えっ、もう一回って……無理だよ」

「高折くん、きっとまだ新名くんに遠慮してると思うから。でもあと一押しすれば、絶対つきあえるって!」



 わたしは冬ちゃんの隣でうつむいた。



「この前だって、めちゃくちゃ勇気出したのに……もう一回なんて、絶対無理。またフラれたら、立ち直れないし」

「フラれないってば。わたしさりげなく、新名くんから聞いたんだけどさ。高折くんって女子にモテるくせに、実は高校生になってから誰ともつきあってないんだって。なんでだと思う?」

「それは……ずっとそばに永峰さんがいたからでしょ?」

「それもあるけど……わたし、思うんだよねぇ」



 冬ちゃんが眼鏡の奥で、瞳をきらりと輝かせる。



「高折くん、好きな子がいるんじゃないかって」

「好きな子……」

「それ、くるみなんじゃないかって」

「ふ、冬ちゃん。漫画の読みすぎだよ」

「描きすぎと言って」



 冬ちゃんはけらけらと笑ったあと、ちょっと真面目な顔をして言う。