「おはよう」

「ああ、おはよ、くるみ。早くご飯食べないと遅れるよ」

「うん」



 寝起きの頭のまま席につく。



 お湯を沸かしているやかんから上がる、白い湯気。

 窓から差し込む、淡い日差し。

 わたしの右側で高折くんがご飯を食べていて、足元ではミルが眠っている。

 なんだかそれだけで、ほっとする。



「いただきます」



 箸をとって、目玉焼きを崩した。

 高折くんの肘とわたしの肘がぶつかりそうになって、顔を見合わせる。



「席、逆にすればいいんじゃね?」

「そうだね」



 わかっていたけど……。

 目玉焼きを一口、口に入れる。



「でもやっぱ、このままでいいか」

「……わたしもそう思う」



 学校でも、高折くんはわたしの右側だし。

 なんとなくこの席が、しっくりくるんだ。



「ごちそうさまでした」



 先に食べ終わった高折くんが、食器をシンクに運ぶ。



「あ、蓮くん。三者面談今日だったよね」

「はい」

「あとで行くね」

「お願いします」



 お母さんがやかんの火を止めて、にっこり笑いかける。



「くるみも、あとでね」

「はぁい」



 三者面談かぁ。気が重い。

 高折くんは勉強ができるからいいけど。



 大学進学を希望している高折くんは、受験のこととか奨学金のこととか、お母さんや先生と話し合っている。

 わたしは高校卒業後のことなんて、まだまだ先だと思っていたのに。