きみとぼくの終わらない物語

「どうして……」



 かすれる声で、高折くんがつぶやく。



「どうしてこうなっちゃったんだろう……」



 高折くんの手が、ミルのふさふさした背中をなでている。



「なんでおれだけ、生きてるのか……わかんねぇ……」



 わたしは黙って隣を見る。

 高折くんはミルの背中をじっと見つめている。



 きっと高折くんは、ずっと考えている。

 お父さんの死を。

 お母さんの死を。

 自分だけが生きている意味を。

 そしてそれをこれからも、ずっと考え続けるんだ。



 わたしはリュックの中からスケッチブックを取り出した。

 そして最後に描いたページを開いて高折くんに見せる。



「高折くん。これ……」



 ゆっくりと顔を上げた高折くんが、その絵を見つめる。



「昨日、描いたの」



 高折くんは黙って、わたしの絵を見下ろしている。

 恥ずかしくて逃げ出したいけど、でもわたしは伝えたい。



「高折くんが勇気をくれたから描けたんだよ。『なれるよ』って。わたしでも絵本作家にきっとなれるって、背中を押してくれたから」



 床に座って、絵本を読む男の子。

 その隣で寄り添うように、同じ本を見つめる女の子。

 淡くやわらかい色合いで塗られたふたりは、とても幸せそうな顔をしている。



 高折くんの手がゆっくりと伸びる。

 わたしの持つスケッチブックに触れて、それをそっと指先でなでる。



「だから高折くんは、最後まで見守ってて。わたしが絵本作家になれるように……それまでずっと見守ってて」

「それまでずっと……」

「そうだよ。高折くんは、わたしを最後まで見守るために、生きているんだよ」



 わたしはまっすぐ高折くんの顔を見る。

 視線がぶつかり、目をそらしたくなったけど、そらさずに見つめた。

 そうだよ。高折くんの生きている意味は、ちゃんとある。



「それが……おれの生きてる意味?」



 わたしがうなずくと、高折くんはふっと息をはくようにかすかに笑った。