「くるみ」



 一時間目が終わるのと同時に、冬ちゃんがわたしの席に駆け寄ってきた。

 結局わたしは一時間目の始まりに間に合わず、先生に頭を下げながら教室に入った。

 校門まで一緒に来た高折くんは、「あとから行く」と言ったきりまだ来ない。



「冬ちゃん、昨日はごめんね……」

「わたしのことなんかどうでもいいの、それよりあのあとどうなった? 新名くんと」



 冬ちゃんがわたしの耳元でささやいてくる。



「えっと……新名くんにはお断りした」

「うわ、マジか。うーん、でもそうだよね。くるみはそうだよね」



 冬ちゃんはひとりで納得したように、うんうんとうなずいている。



「くるみちゃん」

「わっ!」



 突然現れた新名くんに、冬ちゃんがめちゃくちゃ驚いている。



「なんだよ、冬ちゃん。おれはお化けか、化け物か?」



 冬ちゃんが新名くんの前で苦笑いをする。



「なぁ、くるみちゃん。今日、蓮は?」

「え……」

「あ、そういえば、高折くんまだ来てないね」



 隣の席を見ながら、冬ちゃんも言う。



「くるみちゃんも、今日遅刻してきたよな? なんかあったの?」

「べつになにも……」



 わたしは新名くんの顔をまともに見ることができず、視線を落とした。



「ふうん?」



 新名くんはわたしの隣の席にどかっと腰をおろす。

 わたしはびっくりして顔を向ける。



「くるみちゃんさぁ……」

「……はい?」

「もしかして……蓮に告白した?」

「ひっ」



 ヘンな声を上げたのは冬ちゃんだ。あわてて口元を押さえている。

 新名くんは机に頬杖をつき、わたしを見ながら続ける。