「……うそだろ?」



 わたしは目を開けて、高折くんに言う。



「うそじゃない」

「いや、うそだ。そんなのありえない」

「どうしてそう決めつけるの?」

「だっておれ……あんたにひどいことばっかしてる」



 わたしはこの公園で、高折くんに無理やり抱きしめられたことを思い出す。

 だけどわかってる。あれは本当の高折くんじゃない。



「新名は……」



 その声に、はっとする。



「あんなふうにいつもふざけてるけど……いいやつだよ? 昨日の告白も、本気だったんだと思う」



 わたしは黙って高折くんを見つめる。



「だから……もう一回考え直せよ。あんたは新名とつきあったほうが絶対……」



 高折くんの声がそこで止まった。

 わたしはあわてて顔をそむける。

 手の甲で目元をぬぐうと、じんわりと涙がついた。

 いやだ。こんなところで泣きたくない。

 でも――



「それが……答えなの?」



 自分の声が震えている。



「それが、高折くんの答えなの?」



 少しの沈黙のあと、高折くんの声が聞こえた。



「そうだよ」



 わたしは静かに目を閉じる。



「新名と……つきあえよ。そのほうが絶対いい」



 少し冷たい風が吹き、わたしの肩にかかる髪が揺れる。

 乾いた唇から、深い息がもれる。



 わたし、フラれちゃったのかな……フラれちゃったんだよね、きっと。