高折くんと一緒に、はじめてバス停まで行く。

 思いがけない出来事に、わたしの胸の鼓動が、急に速くなる。



 昨日、新名くんと歩いた公園を、今朝は高折くんと歩いている。

 なんだかすごく不思議な気分だ。

 キラキラ輝く朝の日差しが、周りの遊具と高折くんの茶色い髪を照らしている。



 高折くんはやっぱり背が高い。

 同じ制服を着ているけれど、背の低いわたしは、妹みたいに見られてしまうかもしれない。

 そんなことを思いながら、黙って歩いていたら、隣の高折くんが口を開いた。



「新名と……つきあうことにした?」



 高折くんの言葉にどきんとする。

 昨日のことを思い出し、わたしは足を止める。

 ちらりとわたしを見た高折くんも、その場に立ち止まった。



「わたし……」



 きらめくひかりの中、目の前に立つ高折くんに言う。



「わたし、新名くんとはつきあわないよ」

「え……」

「高折くんは、『好きなやついないなら、つきあってみれば?』って言ったけど……わたし、好きな人いるから」



 高折くんは、驚いた顔でわたしを見ている。

 そんな高折くんの顔を見ていたら、どうしようもない想いが胸の奥からあふれてきた。

 わたしはリュックの肩ベルトをぎゅっと握って、声を絞り出す。



「わたし、高折くんが好きだから」



 急に強い風が吹き、わたしの制服のスカートが揺れた。

 公園の木々がざわっと騒ぎ、わたしは思わずまぶたを閉じる。

 お願い。なにか言って。

 なにか言ってくれないと……わたしは目を開けられない。



 風が公園を通り過ぎたあと、高折くんのぼそっとつぶやく声が聞こえた。