ドライヤーで髪を整え、制服のブレザーを羽織る。

 お弁当をリュックの中に詰め込んで玄関に出ると、そこに高折くんが座っていた。

 どうしたんだろう。いつもはわたしよりも早く、出かけてしまうのに。



「ど、どうしたの?」



 わたしが聞くと、高折くんはわたしを見ないままつぶやいた。



「今日はバスだから」

「あ……」



 そうか。昨日みんなと一緒に帰るため、自転車を学校へ置いてきてしまったから。



「バスって何時に来る?」

「えっと、十分発」

「じゃあ、出るか」



 高折くんは立ち上がり、わたしに振り返る。

 わたしはぼんやりとしたまま、高折くんの顔を見る。



「……早く、靴履けよ」

「う、うん」



 靴を履いて外へ出ると、高折くんが待っていた。

 どうやらわたしと同じバスに乗るつもりみたい。



 恐竜のキーホルダーがついた鍵で、高折くんが玄関の鍵を閉めてくれる。

 わたしは高折くんの大きな手と、ゆらゆらと揺れる緑色の恐竜を、なんとなく見つめていた。