家を出て、新名くんと公園を歩いた。

 空は夕焼け色に染まっていた。



「くるみちゃん」



 新名くんの声に立ち止まる。



「さっきの返事、聞かせてよ」



 わたしは振り返って新名くんを見る。

 新名くんはじっとわたしのことを見つめている。



「おれさ、ちょっとわかるんだ」



 黙っていたわたしに新名くんが言った。



「くるみちゃん、蓮のこと、気になってるだろ?」



 わたしの前で新名くんが少し笑う。

 わたしはその顔を見ながら考える。

 高折くんのこと……気になっているのは本当だ。

 わたしが素直にうなずいたら、新名くんはもう一度笑って言った。



「でもさ、くるみちゃんは蓮といても、あんまり楽しそうにしてないよな?」

「え……」

「永峰もそう。みんなあいつのこと、腫れ物に触るみたいに扱って。気を使いすぎて疲れてる」



 新名くんはわたしを見て言う。



「でもおれはくるみちゃんを、悲しい気持ちにはさせないよ。くるみちゃんとは楽しく過ごしたいって思ってる。蓮のことはおれだって心配してるけど、それとこれとは別だ」

「新名くん……」

「おれ、くるみちゃんには笑ってて欲しいんだよ。あの文化祭の日みたいにさ」



 ふたりで校内をまわった日。

 あの日は本当に楽しかった。わたしは心から笑えていたと思う。

 新名くんとつきあったら……きっとわたしの毎日は、もっともっと、明るく楽しく変わっていくんだと思う。



 だけど――。



 秋風がわたしの髪と制服のスカートを揺らす。

 目の前に立つ新名くんが、わたしの顔をじっと見ている。



『好きなやついないなら、つきあってみれば?』



 高折くんにそう言われたとき、わたしは悲しかった。

 高折くんにそう言って欲しくなかった。

 だってわたしは――