「つきあえば?」



 はっと顔を上げると、こちらを見ている高折くんと目が合った。



「好きなやついないなら、つきあってみれば?」



 わたしは黙ったまま、高折くんから目をそらす。

 なんだか胸が、ぎゅっと痛い。



「おれ、やっぱ自分の部屋でやるわ。ここじゃ集中できない」



 高折くんはそう言うと、テーブルの上を片づけ立ち上がった。

 そしてリビングを出て、二階へ上がってしまった。

 冬ちゃんはさらに困ったように、不自然に視線を動かしている。



「新名。あんた、蓮にそれを言わせたくて、ここに来たわけ?」



 永峰さんが冷たい声で言った。



「蓮の反応を確かめたくて、わざとあおるようなこと言ったんでしょ?」



 新名くんはなにも答えない。



「そのためにわたしたちまで巻き込んで、バカらし」



 吐き捨てるようにそう言うと、永峰さんは自分の荷物を乱暴にバッグに押し込み、立ち上がった。



「わたし、帰るわ。矢部さん、お邪魔しました」



 永峰さんがすたすたとリビングから出ていく。



「ごめん、くるみ。わたしも帰るね。また!」

「冬ちゃん!」



 冬ちゃんまでも、逃げるように部屋から出ていってしまった。

 残されたわたしは、隣の新名くんを見る。

 新名くんは黙って前を見ている。