リビングへ戻ると、ソファーに腰かけた新名くんが、隣をぽんぽんと叩いて言った。



「くるみちゃん、ここ座りなよ」



 わたしはそっと周りを見回す。

 一番奥の窓際で、コンビニで買ったお菓子の袋を開けているのが冬ちゃん。

 いつの間にか戻ってきた高折くんは、永峰さんと一緒にグラスにジュースを注いでいる。

 新名くんを避けるのは不自然だし、やっぱりわたしの席はここしかない。



「ほら、くるみちゃん。早くおいでよ」



 新名くんにせかされて隣に座ると、ジュースの入ったコップを渡された。



「じゃあ、とりあえず乾杯でもしますか」

「は? 何の乾杯よ」



 グラスを高くあげている新名くんに、永峰さんが突っ込んでいる。

 自分の家のリビングなのに、なんだかすごく居心地が悪い。



 新名くんに無理やり乾杯させられたあと、担任の先生の噂話をしながらお菓子を食べた。

 しばらくすると永峰さんは自分のバッグから勉強道具を取り出し、長方形のテーブルの上に並べはじめた。



「え、永峰。勉強するの?」



 新名くんがぽかんとした顔で聞く。



「そのために来たんでしょ?」



 すると冬ちゃんと高折くんも、教科書やノートをテーブルの上に出した。



「お前ら、ガチで勉強するつもりだったのか?」

「当たり前だろ。それ以外に何がある」



 高折くんの声に、新名くんはジュースを飲みながら答える。



「いや、おれはさ。お前がくるみちゃんと、どういう暮らしをしてるのか興味があってだな」



 わたしはリュックから出したノートを、テーブルに置こうとして止める。



「一緒に暮らしてると、いろいろあるんじゃね? たとえば風呂場でばったり会っちゃうとか」

「あるわけねーだろ。そんなん」



 高折くんが吐き捨てるように言う。



「え、ないの? 同居あるあるだと思ってたんだけど」



 わたしは新名くんの隣で、固まっていた。

 こういうとき、どんな顔をしたらいいのかわからない。



「あんたアホなこと言ってないで、さっさと勉強しなよ」



 永峰さんが、怒った声で言う。

 だけど新名くんは続けて言った。