きみとぼくの終わらない物語

「ひいっ……」



 声にならない声を上げる。

 よく見るとあの巨大猫が、何かを口にくわえてソファーの上にのぼっている。



「あ、あなただったの……」



 そうつぶやいた瞬間、背中に声がかかった。



「ねぇ」

「はい!」



 あわてて振り返ると、さっき渡したピンクのタオルを頭からかぶった、高折くんが立っていた。

 あっちもこっちもびっくりしずぎで、心臓に悪い。



「ミル、知らない?」

「あ、ここに」



 ミルと呼ばれた猫が、どすんっとソファーから降りて、高折くんの足元にすり寄っていく。

 高折くんは「ミル、ただいま」と言って、肩の上に猫を背負った。



 よけいなお世話だと思うけど、どう見ても重そうだ。

 だけどミルは「ここは自分の居場所だ。誰にも渡さないぞ」とでもいうように、肩の上にぴったりとしがみついている。



「風呂、入ってもいい?」

「ど、どうぞ」

「じゃあ遠慮なく」



 高折くんがミルを肩に乗せたまま、お風呂場のほうへ歩いていく。

 わたしは力が抜けて、へなへなとソファーに座り込んでしまった。



「もう……やだ」



 こんなの心臓が持たない。



 お父さん以外、男の人がいなかったこの家に、同い年の男の子がいる。

 しかもその男の子は、あの有名な高折蓮だ。



 クラスの男子とさえ、ほとんどしゃべったことのないわたし。

 もちろんあんなに目立つ、わたしのような人間とは何の接点もない人とは、目を合わせたことすらなかった。

 それなのに突然、あの人はこの家にやってきた。