ふかふか、ふわふわ……やわらかいものが触れてくる。

 なんだか雲の上でお昼寝しているみたい。

 あったかくて、きもちいい。

 このままずっと、こうやっていられたらいいのになぁ……。



「んなぁ~ご」



 突然聞こえた、にごった鳴き声。

 驚いて目を開くと、わたしのお腹の上に巨大な猫がのっている。



「おもっ……!」



 ベッドの上で体を起こすと、猫がお腹から落ちて、ぬいぐるみみたいにゴロンと転がった。

 雲の上なんかじゃない。わたしに触れていたのは、このでっかい茶トラ猫だ。



「あ、ミル。こんなところにいた」

「ひっ……」



 部屋に入ってくるその気配に、わたしは声にならない声を出し、タオルケットを引っ張り上げた。



「ダメだろ。こんなところに入ったら」

「にゃ~ご」



 ゴロゴロ喉を鳴らしはじめた茶トラが、すっと抱き上げられる。

 おそるおそる視線を向けると、制服を着た背の高い男の子が、わたしのことを見下ろしていた。



「おはよ」

「……おは、ようございます」



 あ、ヘンなところで息つぎしちゃった。



「朝メシ、できてるって」



 男の子は無表情のままそう言うと、猫をどさっと肩の上に乗せ、部屋から出て行った。

 トントンっと階段を降りる足音が小さくなる。

 わたしはタオルケットを頭からかぶる。



「やだぁっ」



 見られた。わたしのパジャマ姿。

 ぼさぼさ頭も。寝起きの顔も。



「やだぁ……」



 開けっ放しのドアの向こうから、猫がまたかわいくない声で、「なぁ~ご」と鳴くのが聞こえてきた。