夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~

「それから仁菜さん」

椿は仁菜がいる、上を向いて言う。

「はい?」

話しかけられた当の本人は、思いがけないことだったかのように目を丸くして、首を傾げている。

「いじめたりしてほんとすまない。悪気はないから」

申し訳なさからなのか、顔を俯かせて椿は言った。それを聞いた仁菜は、首をふるふると横に振る。

「いいのいいの。本当に悪いのはあんたじゃないから。それに結局は全部解決したし。終わりよければすべてよし。みたいな?後悔も未練もないよ」

精一杯の笑顔を作り、仁菜は言った。それは嘘をついて強がっているような、そんな感じだった。

それが私の知る、本来の仁菜。弱音を吐くところなんて、全然目にしたことがなかった。

だからこそ……。

私からの最後の恩返し、させて。

掌を強く握る。それから椿の背中を強く押した。

それに反応した椿は大きく頷く。

「仁菜さん、俺のこと好きでいてくれてありがとな。ひどいこと、たくさんしたのに。気持ちは受け取った」

頬を赤く染めながら椿は言う。仁菜は信じられない、と目をぱちくりさせてから、私に困ったような笑みを向けた。