……こいつ、昨日のお茶飲んだな。

 寝るとき、枕許に置いていたお茶のカップを手にして、震えている桃を見ながら貢は思っていた。

 青ざめ、固まっているさまがなんだかおかしくて、貢は白湯を持ったまま、部屋を出てみた。

「あっ、ごめんなさいっ。
 飲みますっ、飲みますっ」
とドタバタと追いかけてくる音がした。

 振り返らずに笑っていると、

「先生っ、ごめんなさい~っ。
 飲みますっ、飲みますっ」
と飛び出してきた桃が白湯をもっている腕をつかんできた。

 おっと、と揺れたせいで、こぼしそうになったのに気づき、桃は慌てて手を離す。

 間近に目が合うと、桃は恥ずかしそうに、
「お、おはようゴザイマス……」
と言って俯いた。

 来島(きじま)たちが見ていたら、100パーセント、

「ケッ」
と言ってきそうな光景だった。