「なんで......」

「あの子は、話せる状態じゃないの。あなたのせいよ。」


 一瞬、嬉しいと思ったのは間違いだった。

 あんな母親でも、私にとっては母親だから。驚いて戸惑いながらも、その声を聞くだけで不思議と安心した。少しだけ、嬉しかった。

 でも、弱った声の母が言い放ったのは、とても冷たい言葉。


「ここのところ、ずっと体調は良かったのよ?諦めてた結婚式にだって、出られるくらい。それなのに、どうしてあんなこと。」

「お母さん、私は......」

「あなたがいなくなって、桜ちゃんはぼろぼろ。病院のことも、あなたのことも、全部自分のせいだって責め続けて、倒れたの。」

 グサグサと心に突き刺さる言葉たち。呼吸は荒くなり、スマートフォンを持つ手は震えていた。


「晴日ちゃん。お願いだから、もうあの子に関わらないでちょうだい。」


 頭が真っ白になりながら、ゆっくりと耳元からスマートフォンが離れていく。

 その後も、何か言い続けている母の声が聞こえた気がした。けれど、それも私にとっては、周りの雑音と同じだった。


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