「晴日。なんで、神谷製薬とのお見合いが必要だったか、知ってる?」

 すると、彼は唐突にそう言った。前のめりになって、顔の前で手を組みながら私を見る。


 一瞬、面食らってしまった。

 けれど、眉間にシワをよせて考えた。頭を必死にフル回転させ、父や母の言葉を思い出す。でも、分からなかった。

 神谷製薬とのお見合いが、うちの病院に必要だと聞いた。ただそれだけ。深い理由までは、聞けていない。

 私は静かに首を振ると、矢島さんはゆっくりと体を起こした。


「向こうが、全面的な出資をするって言ってきたんだ。結婚を条件にして。」

 アーモンドのような瞳が、私を真っ直ぐにとらえた。言葉をゆっくりと咀嚼し、黙り込む。でも、私は首を捻ることしかできなかった。


「神谷製薬の御曹司が?結婚を条件に私と?」

 思わず、考えるより言葉が先に出ていた。


 出資するための条件が、御曹司との結婚。そんな条件、あちらに何のメリットがあるのだろうか。

 私なんかより、条件の良い女性はたくさんいるだろう。わざわざ潰れかけた瀬川総合病院の娘をもらいたいと思うはずもない。

 正直、わけが分からなかった。