「今日って、ご両親と会うためにきたんですよね。」


 ドレスをもらった日。訳を聞くと、ご両親に会ってほしいとお願いされた。突然のことに戸惑ったけれど、それがパーティーとどう関係があるのかまでは教えてくれず、行けば分かるの一点張り。

 私は諦めて、今日を迎えていた。


 華やかなパーティー会場。ドレスアップした美しい女性たちが、男性にエスコートされながら通り過ぎていく。

 そんな中、慣れない自分のドレス姿にそわそわしながら、私は千秋さんの腕にしがみついていた。そして、把握していないこの状況にも不安がつのるばかり。


「付き合わせてごめんね。偽装ってのは置いといて、結婚したこと報告したら、想像以上に大喜び。今日のパーティーに連れて来いってうるさくて。」

「なるほど....」

「悪いけど、この場だけ取り繕ってくれる?」


 今までは、双葉も零士さんも私たちの本当の関係を知っていたから、話すのに緊張することはなかった。

 でも、今回は関係を隠して、妻として話す。その一発目の相手が、偽りの夫のご両親だなんて、なかなか高いハードルだった。