「君、いくつ?」

「27です。」

 私は、そんな彼に全てを打ち明けた。

 父に思いをぶつけたことから、勘当されて縁を切られたところまで。


「言っちゃ悪いけど、その年で子供みたいな喧嘩したもんだな。」

「言わないでください。これでも初めてだったんです、父に歯向かったのは。」

 そう言いながら、肩をすくめた。

 自分でも分かっていた。いい大人が勘当されるまでの喧嘩をして、言葉にすればするほど余計に恥ずかしさが増した。


「まあ、ほとぼりが冷めるまで、いつまででも――」


「私と、結婚してもらえませんか。」


 あまりにも唐突だったかもしれない。

 でも、とうとう言ってしまった。


 モヤモヤした気持ちを抱え続けるのに耐えきれず、彼の言葉を遮った。ずっと考えていた。いつ言いだそうかと、ずっとタイミングを伺っていた。

 ここへ来た以上、私にはひとつの選択肢しか残されていないと、そう思っていたから。


 しかし、彼はピクリとも動かなかった。

 人生初のプロポーズ。一世一代の告白だったというのに、彼は口をつぐんだまま何も言ってくれなかった。

「あの......」

「いいの?」

 そんな彼がやっと口を開いたのは、私が痺れを切らして話しかけた時だった。