「何を言ってる!親を馬鹿にするのもいい加減にしなさい!」
「どう言われようと本気です。神谷さんとは結婚できません。」
睨み合う私たち。言い始めたら、もう引き返せなかった。母は交互にこちらの様子を伺い、どうしたらいいかとおろおろしている。
「呆れたな。自分の思い通りにならないからと、わがままばかり。身勝手にも程があるぞ。」
その時、思わず耳を疑った。フッと鼻で笑ってしまい、あまりの言われように聞き返す。
「わがまま....?」
「子供みたいに、駄々をこねるんじゃないと言ってるんだ!」
もう耐えられなかった。今まで耐えてきたものも、全て崩れ落ちた気がした。ギュッと握った手のひらには、爪が食い込み、肩が震えた。
「いつ駄々をこねた?いつわがままを言った?」
「晴日ちゃん、落ち着いて。」
「私は駄々なんてこねてないし、わがままも言ってない!今までに一度だってない!!」
大きな声を出して、言い返したのは初めてだった。目を丸くしてこちらを見ている父の顔も、初めて見る。私を止めるため近づこうとしていた母も、さすがの勢いに後ずさった。

