「私も、育ててみようかなって。」

 そんな彼に、私は唐突にそう言ってみた。

「彩さんみたいに。」

 その瞬間、私を見る顔は面食らったようだった。


「なんで?」

 眉間にシワをよせ、顔をしかめる。

 疑うような険しい表情見せると、私は思わず笑った。

「私、彩さんがやりたかったこと、叶えてあげたいんです。ささやかだけど、意思を継いであげたいって思って。だから、千秋さんも、彩さんを忘れる必要なんてない。」

「晴日ちゃん。」

「まあ、私はお医者さんじゃないから、人を助けることはできないけど。お花を育てることならできそうでしょ?」


 千秋さんの心の中で、永遠に生き続けるであろう彩さんの存在。

 そんな彼女ごと受け止めると決めた私は、何かが吹っ切れたように前向きになっていた。


「あ、これがいい!」

 優しく微笑みながら私を見ていた彼をよそに、ちらりと見えた文字に反応する。

「見てください、ここ。」

 そして、そう言いながら指をさすのは、種の横に刺さっている小さなプレート。

「偽り、ごまかし、不思議、自然美....。って、これなに?」

 首を傾げる彼。

 そこには、それぞれの花にある花言葉が掲げられていた。