「貸して。」

 低い声が頭上で囁かれると、手元からそっと指輪をつまみ上げた。彼の手が、左手に優しく添えられる。

 そして、見つめ合うように視線を交わらせると、彼は言った。


「愛してる。もう一度、俺と結婚してくれませんか?」


 その瞳に吸い込まれるように言葉を噛み締め、少しの間をあけた後、私は緊張気味に答えた。

「はい。」


 彼の手が、そっと私の薬指をなぞっていく。共に入りこんでいく指輪が、体にゾクっとした感覚を走らせた。

 その感覚から、無性に幸せを感じた。


 クリスマスの日、私は彼と心を通わせた。

 降り出した雪が、だんだんと木々を色づけながら、私たちの最高の瞬間を演出する。

 凍えるほど冷たいはずの風。

 しかし、彼の胸の中に包まれながら、ホッとする温もりを感じていた。