ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜


(あや)の体はドナーになって、臓器がいろんな人に移植された。もちろん、心臓も。」

 その時、私の心臓がドキッと鳴った。

「それが、君のお姉さんだった。」

 心のどこかで感じていた胸騒ぎが、現実となる。全身の血の気が引いていき、全て嘘だと思いたかった。

 しかし、思い出される6年前の記憶。

 私が21歳の誕生日を迎えたばかりで、アメリカに留学していた頃。姉の桜は、日本で心臓移植を受けていた。


「で、でもっ。」

 戸惑う心。私は視点が定まらないまま、慌てて声を出す。

「移植された人もドナーになった人も、個人情報は明かされないはずなのに。それが、どうして姉だって――」

「向こうの家族に頼んで、俺からもサンクスレターを出したんだ。一緒に、彩が育ててたそのヒスイカズラを押し花にして。」

 しかし、落ち着いた様子の彼が、私の言葉を遮った。


 サンクスレター。

 それは、臓器提供者と臓器移植者が、唯一繋がりを持てる方法。個人情報が保護され、お互い相手のことを知ることができない中で、臓器移植ネットワークが手紙などの受け渡しをしてくれる制度。

 桜も、移植を受けた直後は、そんなやりとりを行っていた。