愛車のレクサスを傍らに、高そうなブランドもののスーツで立つ、目立つ存在。マンションの住人が視線を集めるその人物は、今日、私がデートするお相手。


 クリスマス当日。

 私は、普段あまり着ない黒の総レーストップスを着て、チェック柄のロングコートを身にまとう。下はタイトスカートで、きれいめスタイル。

 今日は少し、お洒落をしたつもり。


 マンションの前で待つ彼は、私の歩幅に合わせるように助手席のドアを開けた。慣れたように車の天井の角に手を置き、エスコートする。

「うん。可愛い。」

 そして、すかさずそう言って微笑む彼に、思わず耳が熱くなった。


 これから、どこへ行くのかは分からない。けれど、車内に流れる音楽に耳を傾けながら、黙って外を眺める。

 そうして、車が走り始めてから1時間。

 外の景色が、だんだん見覚えのある街並みへと変わっていった。辺りが気になり始め、通ってきた道をソワソワと振り返りながら、何度も彼の横顔を見た。


 その時、突然車が路肩に停められた。

 そのままドアを開けにくる千秋さんに促されながら、半信半疑で車を降りると、見えたものに愕然とした。

 目の前の大きな建物を見上げ、声を漏らす。