「明日のクリスマス、1時。ここに迎えに来る。」

 彼の言葉が遠くに聞こえるほど、その迫力に目を丸くする。

 大きな薔薇の花束が、目に飛び込んできた。


「1日だけ。晴日ちゃんの時間、俺にくれないかな。」

 真っ直ぐ向けられた視線。あまりにも真剣な表情に、ドキッとさせられた。

 恐る恐る手を差し出し、ゆっくり腕の中で花束を受け取る。心臓の音が騒がしくなる中、真っ赤な薔薇の美しさに目が釘付けになった。


「誘うのは、これで最後にする。でも、ちゃんと話がしたいんだ。」

 その言葉に、花束を持つ手が少し震えた。

「でも、明日はバイトが。」

 やっとの思いで口を開くと、そんなことを思い出す。クリスマスなんて、私にはもう関係ない。そう思って何も気にせず、シフトを入れた。

 心が揺れながら、気持ちは千秋さんの方へと傾いている。

 父への誤解が解け、同時に彼への誤解も解けかける。話がしたい。そんな思いでいっぱいだった。


「あー。それはー.....大丈夫だと思う。」

 すると、言いづらそうに顎をさすりながら、体を少し背ける彼。私がジッと視線を向けると、彼は苦笑いを浮かべた。

「おかげさまで、クリスマスの予定がなくなったからって。」

「クリスマスの予定.....?」

「そう言えばわかると思います、って言われた。その子が、明日代わりに出るから、焼肉待ってますって。」