ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜


「コーヒーは?飲める?」

 呆然とする私に、マグカップなんて見せながら平然と言う彼。こんな時に、呑気にコーヒーなんて飲んでいられない。そう思っていると、なぜかだんだん嫌な予感がしてきた。

 コーヒー。朝。日課。病院。

 連想ゲームのように、一つずつ浮かんでくる言葉。だんだんと血の気が引いていくのが分かり、顔が青ざめていく。


「今、何時....?」

「7時半。」

「大変、仕事!!!」

 思い出したかのように、その場で大慌て。無駄にジタバタと動き、何からしたらいいかパニックに陥りながら、辺りを見渡した。

「ねえ、あのさ......」

「鞄。私の鞄は!?」

「そこだけど.....、ねえ。」


 今から家に戻ってシャワーを浴びて、化粧をして......

 頭の中で時間を逆算しながら、携帯と財布の存在を確認する。呼びかけてくる彼の声なんて耳にも届かず、慌てて玄関に続く長い廊下を走り出した。


「待って、今日休みっ!!」

 その時、力強く腕を掴まれた。

「昨日言ってたけど。祝日だから、明日は休みだって。」