「胡桃ちゃん!?」

「あああー、心臓とまるかと思ったー。」

「ちょっと何してんの!それ、こっちのセリフだからね!?」

 創くんの後ろから飛び出し、思わず声を荒げる。

 足音の正体は、彼女のものだった。


「だ、だってー!瀬川さんが悪いんですよ?あんなに忠告したのに、無視して隠れて付き合ったりするから!」

 悪びれる様子もない彼女は、ギュッと口を尖らせ、私を指さす。

 そんな中、呆れたように壁にもたれかかる彼と目が合うと、お互い大きなため息が出た。


 ずっと恐れていた謎の気配。それは、胡桃ちゃんだった。

 ぼんやりと気持ち悪かった感覚が、やっと形を現し、ホッと安堵する。

 彼女を疑ってはいたものの、結果信じようとした私。正直、怒りたい気持ちでいっぱいだったけれど、心の中では、もはや彼女で良かったとすら思い、ホッとしている自分もいた。


「胡桃だって、こんな暗い道1人で怖かったんですから!」

 すると、何も言わない私たちを見て、焦ったように弁解し始める。

「店の裏で隠れてる2人見たら、つい体が動いちゃって。でも、こんなことするの初めてだし、どうしたらいいか分かんなくて。そしたら突然いなくなっちゃうし、もう怖くて――」

「ちょ、ちょっと。色々ちょっと待って?」

 しかし、途端に私は眉を寄せ、険しい表情をした。