反射的に、私はすぐに扉を閉めた。
思考が停止し、今自分が置かれている状況を、いまいち理解できなかった。これは、頭の痛みを忘れるくらいの衝撃。人はあまりの衝撃を受けると、意外と冷静になるらしい。
静かにベッドへ潜り込み、頭まですっぽりと布団を被る。そして、もう一度目を瞑ってみた。
「悪い夢....悪い夢.....」
そう唱えながら勢いよく起き上がり、そしてまた扉を開けに向かう。
「何してんの?」
しかし、状況はそう簡単に変わるはずはなかった。キッチンカウンターにいる彼の顔は、変わらずそこにあって、景色も全く同じ。
「なんで?私。なんでここにいるの?」
やっと声が出た。私は、冷静期を通り越して混乱期。構わずリビングで大きな声を出すと、彼は涼しい顔をしてこちらへくるりと椅子を回した。
「覚えてない?酔いつぶれたの。タクシーに乗るまでは起きてたのに、家の住所言う前に寝ちゃうから。うちに連れてくるしかなかったんだよ。」
それだけ言うと、ゆっくり立ち上がりキッチンへ向かった。

