「てかさ、分かんないんだけど。」
「え?」
「千秋さんは結局、晴日のこと好きだったの?それとも、晴日のお父さんの味方なの?結局、騙してた嫌なやつ?」
真剣な顔をして話し出したかと思うと、今度は混乱したように眉間にシワをよせる。こちらを見て意見を求めてきたものの、聞きたいのはこっちだった。
私だって、それが分かれば苦労はしない。
「その結婚指輪もさ、なんで?」
すると、今度は双葉の視線が私の胸元に移動する。
視線と共に、無意識に動かした手。首から下げていたチェーンが、さらっと指に触れた。
「偽装結婚で、婚姻届も出してないのに、なんでくれようとしたんだろう。なんで?訳わかんなくない?」
止まらない双葉の疑問。
しかし、そんな言葉は右から左へと抜けていき、私は心ここに在らず。チェーンをたどりながら、その先にぶら下がっていた指輪に触れ、思わずギュッと握っていた。
あれから、私は千秋さんがくれたこの指輪を、肌身離さず持っている。
彼からの連絡は、あの時の電話を最後に途絶えたままだった。聖子さんの言葉や彼の行動に惑わされ、ますます謎は深まるばかり。
けれど、この指輪をもらった時の言葉だけは、どうしても忘れられなかった。

